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2016年12月23日 (金)

MTBOからみえるオリエンテーリングの醍醐味

こんにちは、朱雀OKの加納です。
今回は、アドベントカレンダーの記事として、MTBOのことについて書きます。
かるく自己紹介をすると、1988年京都女子大学オリエンテーリング部に入部。
3回生の時、90岐阜インカレで個人、リレーとも6位入賞。
4回生の時、学連セレに落ちて91日光インカレW21Aでブラックメダル。
(同ブラックメダルには現スキーO日本代表の酒井佳子さんもいました・・・)
卒業後は中村弘太郎くん(同期)、樋口一志さん、寺嶋一樹さんらと朱雀OK創立、
会員ナンバ-1番。(単に五十音順にしたから)
その後はフットOのワールドカップに出て修行したり、97年に初めてWOCに出たり、で今に至ります。
きっかけから現在まで
最初のきっかけは、日本でMTBOが初めて開催された、菅平高原での体験会。
その時の体験がなんだかとても楽しくて、勢いでMTBを買い、2003年にチェコのピルゼンで開催されたMTBOのワールドカップ大会に出場してみました。
その当時、いまよりもっとルーズでカジュアルなMTBOの世界に、フットOとは違う自由と開放感を強く感じたことを覚えています。(いまでもそうだけど)
その時の記事をオリエンテーリングマガジンに書いたはずなのですが、どうも見つからず。(幻の2003年6月号に載っているかも?)
その後は、2005年の愛知県でのフットO世界選手権大会(WOC)開催もあり、フットO一筋の毎日になり、しばらくバイクから足は遠のきます。
2回目のきっかけは、2007年の世界選手権大会の代表選考から落ちたことですね(笑)
フットOの代償に、MTBOを選んだ、というなんとも後ろ向きな動機でしたが。
フットOに対する思いと反動が強すぎて、勢いだけでエントリーしたものの、バイクの実力はママチャリレベル。出場選手が少なかったおかげで、なぜかロングファイナルに出場できましたが、コテンパンで帰ってきて、いわゆるお約束的な海外オリエン体験でした。
 2008年から2012年までは、フットO世界選手権大会(WOC)に日本代表として出場できたこともあり、メインはフットO、サブはMTBO、という気持ちで両方の競技を続けていました。
2012年スイスでの世界選手権大会で、フットOには気持ちの区切りがついた感があり、2013年からMTBOに本気で取り組みはじめました。
Agueda
(2016年ポルトガルWMTBOCのロング地図。簡単にみえて1-2、12-13など
なかなかの曲者です。)
本気でMTBの練習をする 
フットOにはランニングのトレーニングが必要であるように、MTBOにはMTBのトレーニングが必要です。日々のトレーニングにもバイクを取り入れ、実戦も必要、ということで、最初は恐る恐るですが、国内のMTB大会に出場してみました。
2シーズン目で一番上のクラス(女子エリート)にあがることができましたが、その先が遠い。何しろ完走すら簡単にはできません。さすがオリンピック種目です。まあそんな、全く別のスポーツを2つも3つもさくっとてっぺん極めるなんてふつうはできませんって。
日本のMTB業界で、オリエンテーリング業界との違いを感じたことをあげてみます。
・マススタートで、コースを周回で競うため、トップ選手に抜かれそうな遅さで走っていたら、(80%ルールという。安全のため)途中でコースから降ろされる。←泣き
・そんなこんなで完走できなくても、順位が付く。←これすげー。
・見た目も勝負のうちらしく、上から下までウェアや小物、ブランド、コーディネートにこだわる。すね毛を剃るのもその一部。
・泥どろのウェアはOKだが、破れたウェアはNGである。
・プロとかいるし、スポンサーとかついたりして、かなり派手な商業スポーツ←見た目と実力が釣り合ってない空洞感もあり。
・レースはどちらかというと格闘技+エンデューロなので、スタートダッシュからガチ勝負。
三味線、幅寄せ、タックル、落車など、女子でもいろいろ危険。
・ルールのためにルールを守れ、みたいな、いかにも日本的な堅苦しいメンタリティを感じる。(特に運営側)
・それとは別に、アウトドアの個人競技に共通する、自律と自由と共助の雰囲気がある。
(特に選手側)
・どんなレベルの実力の人も、平日、土日ともにトレーニング量はすごい。
(練習していないと勝てないし、出場クラスを維持できないから)
・全日本タイトルはかなりリスペクトされる←これすげー(苦笑)
MTB業界とオリエンテーリング業界を比べてみると、オリエンテーリング業界は、確かにいけてない部分もあるけれど、それを補って余りある、健全さ、純粋さ、風通しの良さがあることを再確認しました。
これは日本のオリエンテーリングの競技人口規模、競技者≒運営者という構造、商業ベースにのってないからこそ、保たれているのだとも思います。
他の競技と比べても、この雰囲気の良さは、胸張って誇っていいレベルです!
そして、MTB業界のいいところを取り入れるなら、
オリエンテーリングの皆が、もっと普段から練習する雰囲気がほしいし、
このスポーツの魅力を伝えるためにも、見た目には意識するようになってほしいし、
やっぱり、全日本タイトルのステイタスが上ってほしいですよね。
(あと、かるい感じで書いていますが、オリエンテーリングと同様、MTBだって、その競技を日本の中につくりあげて成熟させてきた、多くの人たちの努力と熱意と、競技に対する深い愛情があります。当然ですが、それに対して十分な敬意をはらってこそ、その世界に受け入れてもらえるし、互いに得るべきものは多いはずです。)
Mtbo
(↑2016年のMTBO世界選手権大会についての日本チーム報告書。
PPTでかなりボリュームがあるので、また別にMTBO JAPANチームHPで
アップされるかも・・・(未確定)HPアドレスは以下
全然更新してないですね。すいません・・・)
MTBOからみえるオリエンテーリングの醍醐味
2016年10月に行われた、愛知県野教での世界大会報告会で、
「サムリーディングもせずに時速30kmでオリエンできるか!」っていうPPTスライドの1枚をつくったのですが、これはまあ受け狙い+フットオリエンテーリングとの一番の違いを明確にしようとしたためでした。
しかし、いま思えば、時速30kmとはいかないまでも、MTBO選手たちは、上記のことをレース中に実践しようとしている、いやトップ選手はできているのです!(たぶん)。
30km
(↑ポルトガルWMTBOCイベントセンターで出番を待つ看板。競技エリアを走行する自動車向けと思われるが、実は選手にも適用?)
 2016年9月に出場した、リトアニアでのワールドカップ、ロング競技において、レース後半からゴールまで、2人の選手においつかれ、自然とパックになりました。
その際に、前を引いていたチェコの選手の動きを、追いかけながら観察することができました。
分岐の選択時に迷いのないスピード感、途切れなく地図を読みつつ、バイク操作も無駄なく、とてもスムーズな動きでした。
つまり彼女は、サムリーディングせずにスピードも落とさずに、MTBを操作しながら
オリエンテーリングをしている・・・!
 これがフットOのワールドカップなら、このレベルの選手には1レッグもついていけたらいいところです。しかしマウンテンバイクなら、ちょっと違ってきます。
それは自分がやってきたバイクトレーニングの量、いま目の前にいる選手とは、パワーとスピードにあまり差がないという自信(と事実)。
パックになってから、一度はルートが別れ、次のコントロールでは自分が先行!
その後は吸収されたものの、最後までもつれあい、ラスポーゴールのスプリント勝負は自分が踏み勝って先にフィニッシュ。
直後、お互い健闘をたたえ合う際に、速いわねー、って言われました。
成績としては負けていたのですが・・・。
レース中、互角の戦いをした実感、互いに相手を認めあえること、レース後の高揚感。結果はともかく、走りきった感のあるレースでした。
レースの後に残るのは順位だけ、とはいうものの、走っている当人にとって、オリエンテーリング競技を満喫すること、がその場の最優先でもいいのではないでしょうか。
普通、オリエンテーリング競技は、ひとり山の中で自分自身と戦って走りきる、孤独なスポーツです。
それも楽しい、それもいいけど、上記のようにレース中に他の選手たちと競り合い、ナビゲーションやフィジカルを競い合える瞬間、そんなぎりぎりのレースの中に身を置くこと、これもオリエンテーリング競技の魅力であり、そんなオリエンテーリングはものすごくエキサイティングで面白い!と、思っているのです。
国内でのフットOでは、なかなかそのレベルでのレースを体験することはないし、日本の現状でやっている限り、国際レースで通用するためのノウハウもトレーニングも足りない。この差は、いったいどうしたら埋められるのか、いろいろトレーニングする中でも、ちょっと途方に暮れるときもあります。
2013年から本気でMTBOに取り組んで、この数年の国際レースで得た満足感、達成感は、(困ったことに)フットOでの国際レースよりも大きくて、これはいったいどういう事なんだろう、とおもってしまったわけです。
フットOが大好きで、それ一筋にがんばってきたのに、フットOよりMTBOの方が、努力に対する成果が高いなんて。
この差についての一つの答えは、たぶんフィジカルの問題だと思っています。
MTBOなら、ナビの差はフィジカルがかなり補ってくれるのです。
たとえ相手は時速30kmでナビしているとしても、時速30kmでパックできるほどのフィジカルトレーニングは、やろうと思えばその環境や、得られる情報は十分整えられているのです。
ともあれ、ひとつの競技を、その醍醐味にいたるレベルにまで楽しむためには、ある程度以上のフィジカル(体力、持久力、スピード)能力は必須なのだなと、実感しました。
実はそれはフットOでも前々から言われていることなのですが、これがピンとくるためには、自分自身が「ある程度以上」、を見据えられるレベルにまでトレーニングを積む、それをレースで実感する、というステップが必要なのですよ。
MTBOのナビ技術については、フットOに比べると、まだ発展途上の段階だと思います。しかしトップ選手はすでにものにしつつあるようだし、近いうちにブレイクスルーがあるかもしれない。いまMTBOをやっている選手たちは、皆このあたりを狙って、世界中で試行錯誤、切磋琢磨しているのです。(たぶん)
新しいスポーツの新しい技術の開拓現場にいる臨場感、誰もうかうかしていられない感じも、今のMTBOの魅力ですね。
Relay
 
(↑競技中の写真。タッチフリーSIなので、コントロールで減速の必要なし。)
マルチトレーニングのすすめ
オリエンテーリング競技には、フットOの中にロング、ミドル、スプリント、リレー、と種目があって、さらにスキー、MTB、トレイルという別種目があります。
1つの競技を極めようとすると奥深く、フットOがオリエンテーリングの王道であることには違いないでしょう。でもフットOだけがオリエンテーリング、ではなくなってきています。トレイルもスキーもMTBも、さらにいえばロゲインなども、広くとらえるとオリエンテーリング(方向を定めて進め!)なわけです。
バイク業界も、ロードからMTBからたくさん種目があり、それこそバイクの種類が全く違うのですが、複数の種目をやっている人が、けっこういます。たとえば自分はMTBとシクロクロスの2種目。
バイクまで違うので、2種目やろうとすると2台は必要です。でもバイク業界の人は、迷うことなくたいてい2台(以上)そろえて走っているのです。バイク競技という大枠の中の、各種目の敷居は低いのかなあ、と思います。
そして2種目を同時にやると、それぞれの競技に必要な技術やフィジカルの違いもわかるし、ひとつの種目の技術が、別種目の技術力の向上にもつながっていきます。
フットオリエンティアも、MTBOやスキーOをしてみれば、自身のオリエンテーリング力の全体をレベルアップさせることにつながると思います。
 私が実感した例でいうと、MTBOでは、まずスピードが速すぎて、バイク操作も始終手を離せない状態で、地図を読むことがいかに難しいかを体験できます。
そして、バイクを降りて次にフットOをしたときに、なんて余裕があるんだろう、めちゃめちゃ地図をよむ時間があるわ、と思えます(これ絶対)。
ということは、フットOで地図を読まずにミスをする、なんて、怠慢以外の何物でもない!のですよ。
フットOにこだわりすぎず、いろいろやってみてもいいんじゃないでしょうか。
ちなみに私の普段のトレーニングは、基本は一日2回。
昼はオフロードメインの公園コース、5kmほどをラン、夕方は同じ公園を走るか、自宅の室内ローラーでバイクを踏むか。
上記の3つともやる時もあります。正味1~2時間ちょっと。
レース明けの月曜とレース前の土曜は軽めになりますが、走らない日はほとんどなし。
ランも室内ローラーも、ジョグ的なものからビルドアップ、インターバル的なものを組み合わせています。
ローラーでのインターバル的なものは、みなさんお馴染み?のローラーチャレンジと同じ負荷でやります。でも2分連続ではなく、たとえば30秒だけ全力+30秒休む×20回、つまり全力は正味10分。全力時間を30秒~50秒などいろいろ変えるとまたつらい(笑)。
バイクのトレーニングに関して、探せばたくさん出てくるし奥が深いので、いろいろ参考になります。
走るばかりだと飽きるときも、バイクと組み合わせるとメリハリが出て続けやすいです。
また、フットOで足を捻挫していたりしても、バイクでトレーニングができるので、走れなくてストレスが溜まることもなくなります。
私はMTBOをやりだしてから、結果的にはフットOの成績も上がりました。
体力も筋力も、走るトレーニングだけでは向上しなかった部分もあります。それに加えて国際レースでの感触も変わっていきました。
そして、同じオリエンテーリングだけど、新しくて違う世界をみることができました。
フィジカルの差に臆することなく、欧州のオリエンティアと互角に戦える、胸をはって国際レース場に出ていける。これが、私がMTBOをやりはじめて、最大の収穫です。

もっと日本のオリエンティアに、そんな体験をしてほしい、その場を感じてほしいのです。
そういう人が増えていけば、日本のオリエンテーリング界に、新しい可能性を拡げられるかもしれない。
その可能性に賭ける人が、もうちょっと現れてくれないかなあ。

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